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わくわく着物~着物の愉しみ~ 臥竜亭へようこそ!

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『助六由縁江戸桜』

■ □■『助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)』■□■

「助六」。何だか聞いたことがありませんか? そう、おいなりさんと海苔巻きのお寿司詰め合わせセット。あれ、「助六」です。この演目が名前の由来となっています(な~んでか。答えは文中に!)。おいなりさんと海苔巻きを見て「あ、助六だね」と思うくらいに、当時の人たちに親しまれた演目でした。特に「市川団十郎演じる助六」は、江戸の庶民のスーパースターだったそうです。そのお話はと申しますと…。

 花の吉原、中之町。今全盛を誇る傾城・三浦屋の揚巻が華やかに花魁道中で登場してきます。彼女を待ち受けているのは「髭の意休」と呼ばれるお金持ち。揚巻に入れあげて通ってくるのですが、揚巻には「花川戸の助六」という、とびっきりイイ男の間夫がいるので、相手にしません。腹立ち紛れに助六をこき下ろす意休。負けじとやり返す揚巻(ここ見せ場。威勢とテンポのいい啖呵を楽しんでね)。そこへ颯爽と助六登場。内心おもしろくない意休をさんざんからかい、意休の子分達を叩きのめして、これでもか! とケンカを売る助六。何とかこらえて、奥へ引っ込む意休。
 一人になった助六に、白酒売りが声を掛けてきます。実はこの二人、曽我十郎・五郎の兄弟で、弟の喧嘩好きの噂を聞きつけ、白酒売りに化けてたしなめにきたと話す十郎。兄弟の父・祐信が主家の家宝・友切丸(刀)を盗まれた責任を負わされたため、家宝の行方を探して、人の集まる吉原で毎日喧嘩を売っては相手の刀を抜かせて調べていたのだと打ち明ける五郎(助六)。事情が分かって謝る十郎ですが、すっかりへそを曲げた弟の機嫌をとるうちに、ついなりゆきで一緒に喧嘩を売るはめに陥ります。珍妙な喧嘩指南が始まりますが、なんともシマらない十郎。そこへ揚巻が客を見送りに出てきます。助六は止める揚巻の言うことも聞かずにヤキモチ半分でその客に喧嘩を売りますが、傘を取った客の顔を見てびっくり! それは助六の母・満江。やはり助六の喧嘩好きをいさめようと揚巻に協力を求めにきていたのでした。助六に訳を聞き、納得しますが、けがでもしては…と、紙子(紙の着物)を着せて、喧嘩を止めると誓わせる満江。
 母と兄が去った後へ、やってきたのが髭の意休。母との誓いのために手が出せない助六を、さっきの仕返しとばかりに罵り倒します。実は意休は、助六の正体を知っていたのです。調子に乗って意休が刀を抜いたのを素早く確かめれば、これぞ探し求めた家宝・友切丸。すぐにも取り返したいが、人目があっては面倒と、揚巻となにやら打ち合わせ、いったん引き上げる助六ですが、やがて夜も更け、店から出てくる意休を待ち受けるます。盗まれた友切丸を持っているからにはただ者ではあるまい、と迫られて、意休も本名を明かし、激しい斬り合いになります。ついに意休を倒し、友切丸を奪い返しますが、通りかかった若い衆に騒ぎ立てられ、追いつめられて天水桶に身を隠す助六。追っ手に見つかり、あわや…という所を揚巻に助けられます。「その棒のはしのわしが身へちょっとでもさわってみや。五丁目(吉原)は暗闇じゃぞ!」と、吉原一の傾城の心意気を示す名啖呵。やっと友切丸を取り戻した助六は、吉原見世の屋根づたいに、いっさんに落ち延びていくのでありました…。

 仁左衛門の助六に、玉三郎の揚巻、揚巻の妹分の傾城・白玉に福助、という豪華キャストで、ワタクシ、観ております。えっへん! 実はその時の題名は「助六曲輪初花桜(すけろくくるわのはつざくら)」。同じ演目なのですが(用いる楽曲などに若干違いがあるそうです)、市川団十郎という役者が助六を演じる場合に「助六由縁江戸桜」となるそうです。それは、市川家の家の芸・「歌舞伎十八番」に数えられるから…というのは、ま、知っているとちょっと通を気取れる、というお話。今の団十郎さんも、とても清潔感のある、堂々としたいい役者さんなので、ぜひ一度、「団十郎の助六」を観たいと思っているのですが、なかなか機会がありません。
 対する仁左衛門さんは、ちょっと線の細い優男風助六。キリリ男伊達、というよりちょっと駄々っ子入っていて、『かわいい助六だなぁ^^』と思いました。鉄火な揚巻姐さん、母性本能をくすぐられたかな?
 豪華な舞台装置だし、ある程度分かりやすい「いかにも歌舞伎」な演目なので、「初めて歌舞伎」な方にいいかもしれません。
 さて、お寿司の方の助六ですが、「揚巻=油揚げ」「助六の巻いている紫の鉢巻き=巻き寿司」という連想のようです。助六は紫の鉢巻きを頭に巻いているのですが、もとはあの紫の鉢巻きは、「病鉢巻」といって病人がする物なのですが(時代劇で、時々見ますでしょ)、助六の巻くのは「競(きお)いの鉢巻」といって、男伊達の威勢良さと荒若衆の色気を感じさせる小道具なんだそうです。「病鉢巻」と「競(きお)いの鉢巻」の違いは、額から上に出る部分が、まっすぐなのが「病鉢巻」、力強くねじってあるのが「競(きお)いの鉢巻」です。

 さあ、何を着て「助六」観に行きましょうか。舞台は吉原なので、幕開けにずらりと傾城達が並び、とっても艶やか。中でも揚巻の衣装は、きれいというのか、派手というのか、ばかげているというべきか…というくらい、すごいです。競ってもしょうがないので譲って、すっきりとした金茶の江戸小紋や色無地に、紫の帯、なんてどうでしょう。もちろん、「助六」でございますよ(^o^)。



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